★report★東京都美術館『杉戸洋 とんぼ と のりしろ展』
会場風景 上:《module(for room A)》 2017 年 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
小さな家、空、舟などのシンプルなモチーフ。繊細に、あるいはリズミカルにおかれた優しい色やかたち。
抽象と具象の間を行き来するような作品で、国内外の多くの人々を魅了してきた杉戸洋さんの個展が上野の東京都美術館で開催中です!
いつも通る道でも、ふとした時にきらきら輝いて見える瞬間ってありませんか?
気分が良くて心が澄んでいて、お気に入りの曲を聴きながら歩く、雨上がりの朝。雨にぬれた道のタイルに、透明で虹色の陽の光が輝いて、なんだか目に映る世界、全部がきらきらして「あれ、この道こんなに綺麗だっけ?」と。
今回の杉戸さんの展示は、そんな空間全部が色と光で輝き出す、とても大切な体験をさせてくれるものでした✨
自分の心の中まできらきらしていくような体験で、きっと杉戸さんの展示を見ている時の自分の目は、奈良さんが描く小さな女の子や男の子の宝石みたいな目のようになっていたのではと思います…!
会場となる吹き抜けの空間は、レンガ色のタイルの床に、コンクリートを削った壁などで作られた、独特の重厚感ある佇まい。一方、絵画の展示においても、時には発泡スチロールやパンチカーペットといった、ありふれた素材によるさりげない「しつらえ」を施し、空間を整えていく杉戸さん。
そんな、“展示空間も含めた作品づくり”をしていく杉戸さんが、特徴的な建築である東京都美術館で展示をしたらどうなるだろう? そんなところから始まったのが今回の展覧会だそう。
「自分の作品というよりもその空間全体をきれいに見せられたらと思ったんです」と事前のインタビューで杉戸さんは語っていました。
入って受付の方の一言、「この入場券で2回までご入場いただけます。時間帯によって違う陽の光によって、空間の色が変わりますので、その違いを楽しんでください」。
はじまりからわくわくするぞ…!と思って中に入ると、今まで何度も足を運んでいるはずの空間が全然違うのです!
展示空間は、2階分の吹き抜け空間を含むギャラリーA・B・Cの3つ。
ギャラリーAでは、レンガ色の吹き抜けを見上げる先にピンクやグリーン、ブルーの帯がリズミカル浮かび、大きなすりガラスの窓には、色とりどりのシートが貼られ、陽の光が虹色になって優しく空間に差し込みます。
左:会場風景 2017 年 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
右:会場風景 《module(from the sky)》 2017 年 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
左 :《module(for room A)》(部分) 2017 年 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
右上:《untitled》 2017 年 グリッター、アクリル、カンヴァス 作家蔵 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
右下:《untitled》 2017 年 油彩、カンヴァス 作家蔵 ©Hiroshi Sugito 撮影:森本美絵
ギャラリーAは吹き抜け空間なので、ギャラリーCの渡り廊下のような部分が見えるのですが、そこには、虹のようにも船のようにも見える、愛知の常滑焼で作られた色とりどりのタイルの大きな作品がゆったりと佇んでいます。釉薬で塗られた表面は、まるで雨上がりの道のように光を反射してきらきらと輝き、見上げていた視線を水平線に落とすと、ギャラリーの壁の質感と響き合うような、杉戸さんの絵画作品が並び、照明はその壁の凹凸を浮かび上がらせながら作品を照らし出します。
歩くたびに違った輝きや質感を見せる空間に、散りばめられた作品。まるで展示空間全体のあちこちから、楽しいおしゃべりが聞こえてくるような、空間全体が輝き出すような、そんな、まぼろしのような体験でした。
朝早くから陽が沈む夜まで、ずっとこの空間にいたいと思わせてくれる展覧会。
空間全体が作品の本展は、もちろん二度と見ることはできません😿
まだ行かれていない方には、ぜひ、この素敵な体験を味わってもらいたいと心から思います✨
また、9月24日(日)には、建築家である西澤徹夫さん、大石雅之さんと杉戸さん3人のトークイベントも開催されます!詳細はHPよりご確認ください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
杉戸洋 とんぼ と のりしろ
Hiroshi Sugito module or lacuna
<会期>2017年10月9日(月・祝)まで
<会場>東京都美術館(ギャラリーA・B・C) 東京・上野
<概要>
開室時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後8時まで)※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、9月19日(火) ※ただし、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開室
<公式HP>