★report★ 東京都美術館にて開催中!「伊庭靖子展 まなざしのあわい」
東京都美術館では、企画展「伊庭靖子展 まなざしのあわい」が開催中です。
画家の眼とモティーフの“あわい”にある世界に魅せられた伊庭靖子さんは、触れたくなるようなモティーフの質感やそれがまとう光を描くことで、その景色を表現し続けてきた現代作家。
自らが撮影した写真をもとに作品を制作するスタイルはそのままに、近年では、それまで接近していたモティーフとの距離が少しずつ広がってきたのだそう。
伊庭靖子 Untitled 2006-06、油彩・カンヴァス、MA2 Gallery蔵
“あわい”の世界
最初に出迎えてくれるのは2003年から製作された大画面のクッションと寝具のシリーズ。写真をもとに、巨大なカンヴァスに丁寧に描かれたモティーフは、眩しい光の中で浮かび上がる立体物に見えるほどの迫力。(本当に立体に見えるので、思わず左右から覗いてしまいました…)
模様や布目の細部まで描きこまれたモティーフは、そこには描かれていない、これらが置かれた白い部屋や、柔らかな光を送り込む窓、それらに触れた時の感覚までをも感じさせてくれます。
ここから陶器のシリーズ、モティーフをアクリルボックスに入れたシリーズへと進んでいくにつれて、モティーフとの距離が徐々に広がっていくのですが、その広がりがとても心地よいのです…!
一面の霧の中、すこしずつ霧が流れ、静かに景色が浮かび上がってくる時のような、なんとも言えない澄んだ感覚がするのです。
会場風景
モティーフをアクリルボックスに入れたシリーズでは、透明な箱に光が反射し、周囲の風景が映り込みます。「アクリルボックスで四方八方の風景を全部映し込んでいくと、この中に〔まわりの空間を〕集約していると思った」と語る伊庭さん。その言葉どおり、複雑な空間が1つの画面の中に混在しています。会場の写真撮影OKのエリアでは、展示会場である東京都美術館で撮影した写真をもとに作られた作品が並んでいます。
作品を観ていく中で感じるのは、「目の前(眼とモティーフの“あわい”)にこんなにも繊細な世界が広がっていたんだ」ということ。“まなざしのあわい”という展覧会名に納得です。
「見る」ことの裏側へ。伊庭さんの“実験”を、追体験する
観る人の視線を奥へ奥へと引き込んでいくような、暗さの中の淡い光に注目したシリーズ。
風景を粒に分解し、再構築することで風景に漂う光と大気の厚みなどが表現された版画のシリーズ。
そして展覧会最後には、伊庭さんが今回初めて手がけたという新作の映像作品2点が上映されています。
一見すると砂嵐のように見えるモノクロの画面では、立体視で観ることで、映像が浮かび上がります。シルエットのようになった人影や街の雑踏などが流れる映像は「どこかで見た景色かもしれない」と思わせます。
伊庭靖子 Untitled 2018-01、油彩・カンヴァス、eN arts collection蔵 撮影:タケミアートフォトス
「タイトルに『まなざし』とありますが、さまざまに“見る方法”を試しながら制作を続けています。これまで実験を繰り返すなかで、自分の想像を超えるものとも出会うことができました。“見る”ことを解体し組み直すことで、日常のなかでも新たな見方に出会えるかもしれません」
ー展覧会公式HPより、伊庭さんのコメント抜粋ー
展覧会では、足を進めるごとに「見る」ことの深みにはまり、最後には、自分の記憶や感覚の中に入り込んでいくような、「見る」ことの裏側に入り込むような感覚になります。
さらに、年代順に伊庭さんの作品が並べられた展覧会では、伊庭さんが作品を通して行ってきた“実験”を追体験しているような感覚にもなりました。
視覚以上の感覚を刺激する展覧会。
まだご覧になっていない方は、この夏、ぜひ楽しんでみてください!
ちなみに、8月はサマーナイトミュージアム割引もあります。
日中は暑くて…という方にはオススメです◎
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会期:2019年10月9日(水)まで
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
開室時間:9:30~17:30(金〜20:00 / 8月9日、16日、23日、30日〜21:00)※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)、24日(火)(ただし8月12日、9月16日、9月23日は開室)
料金:一般800円/ 65歳以上500円/ 大学・専門学校生400円/ 高校生以下無料
<サマーナイトミュージアム割引>
8月9日(金)、16日(金)、23日(金)、30日(金)の17:00~21:00は、一般600円、大学生・専門学校生無料※証明できるものをお持ちください
Comments